Masuk「ただいまー!」 バーシに勇気づけられて、元気に帰宅の言葉!「おお、アユム。おかえり」「おかえり、アユムちゃん」「おかえりー」 おじいちゃん、おばあちゃんとハーちゃんが、リビングから声をかけてくれた。三人で、JANGOをやっていたらしい。「アユム。ちょっと、座ってくれ」「うん」 ハーちゃんに詰めてもらって、隣に腰掛ける。「オレたち、アユムとハーちゃんが寝た後、二回話し合った。で、バーシムレちゃんとのこと、こう考えることにした」 ごくり。つばを飲み込む。「オレな、マエへさんとの交際、彼女のお義父さんに、何度も断られてな。何度も通って、ひたすら誠意を見せた。最後には赦しをもらったけど、一年ぐらいかかったっけな。でな、アユムにも、こんな苦労させるわけにはいかねえなって思った」「あのときは、ほんと大変でしたからね」「だからアユム。堂々と彼女と付き合いなさい。オレらからは以上だ。アルクたちも、仕事が終わったら、話すことがあるそうだ」 こほんと、咳き込むおじいちゃん。「ありがとう!」「席を立ち、ぐるっとテーブルを回り込んで、おじいちゃんたちに抱きつく。「おっぷ。ふふ。孫を困らせちゃいけねえよな」 しばらくそうしていると、背後から声がかかる。「おねーちゃん。私からも、話がある」「うん」 そう言われ、再度ハーちゃんの隣に腰掛ける。「私、フーちゃんと『やけジュース』した。フーちゃんも、ショック受けててさ。ダブル失恋だよ。でも、フーちゃんとこれ以上気まずくならなくなって、良かったのかな。とにかく、いじょっ!」 ため息一つ吐く、ハーちゃん。「ありがとう。二人とも。ごめんね。そして、ありがとう。今度、フーちゃんに直接言うね」「うん」 ずー……と、ジュースをストローで吸い上げる、マイシスター。「絶っっっ対、幸せになってよね! 私たち、同時に振ったんだからさ!」「約束する」 互いに、真剣に見つめ合う。そして、ハーちゃんは、「ん」とだけ言った。「アルクたちが、仕事終わってから、飯にしよう。今日は、特別に七時で店じまいだ」「お父さんたちに、お礼言わなきゃね」「かわいい娘の誕生日だものよ。いつもみたいに九時じゃ、ハーちゃんが寝ちまわあ」 とりあえず、お風呂に入っている時間はありそうなので、汗を流して、部屋着に着替える。 お風呂上がり
「今日はありがとう、みんな!」 ククの家で、再びお誕生会。その主役は、ボク! ついに、ついについに! 夢にまで見た、十三歳になったのです! 今回も紙の輪飾りがそなえ付けられ、テーブルには、でん! と今度はチョコクリームのショートケーキ!「すごいねー、クク! これ、一人で作ったの? 学校あったのに、大変だったでしょ?」「まあ、ずいぶん早起きしたけど、大親友のためだもんよ! 頑張ったぜ!」「ほんと、ありがとう!」 十三本のろうそくの、なんと感動的なことか!「じゃあ、いくよ! ふーっ……!」 火がすべて消える。「アユム、誕生日おめでとう!!」 みんなから、拍手をもらう。ああ、二度の人生で、最良の日だ!「ねえ。ボクのために、歌ってほしい歌があるんだ。前世の歌だから、一回ボクが歌うね」 『ハッピーバーデー・トゥー・ユー』を歌う。前世の誕生日では、おなじみだった歌。前世でも、十三回聴きたかった歌。ボクはこの世界で、やっと十三回目のこの歌を、大切な友達たちから、耳にするんだ。「お誕生日おめでとうって、そのまんまな歌なんだけど。どうかな? 歌えそう?」 前世の言葉だから、ここ、ラドネスブルグの言葉ではない。「簡単な歌詞だから、意味はわかんなくてもいけると思う」 バーシの言葉に、凸凹カップルも頷く。「じゃあ、お願い」 みんなが、『ハッピーバースデー・トゥー・ユー』を歌ってくれる。ちょっとたどたどしいけど、嬉しい!「ハッピーバースデー、トゥーユー……」 再度、三人から拍手。「ありがとう! ほんとにありがとう、みんな!」 ぺこりとお辞儀。ちょっと、涙出ちゃった。「じゃ、ケーキ切り分けていいかな?」「おねがい」 ククの手で、ケーキが、みんなのお皿に載せられる。「いただきます!」 ぱくっ……。んん! ククのお母さんのに、負けず劣らずおいしい!「おいしい! おいしいよ、クク!」「お褒めに預かり、光栄だぜ」「ほんと、いいお嫁さんになれるよ~。シャロン、やったね!」 サムズアップ。「へへ~。結婚したら、姉さんのおいしいごはん、食べ放題っす~」「ばっ……おめー、照れるじゃねぇか……」 もじもじするクク。ふふ。 ケーキもおいしく食べ終わり、プレゼントお渡し会。「色々悩んだ末に、三人でお金出しあって買ったんだけど……」
「はァッ!?」 お昼休み、昨日家族に、バーシとの関係を告白したことを、当の本人と凸凹カップルに告げると、驚愕とか呆れとか、何か色々混じってそうな、変な大声が三人から上がる。「しーっ。クラスのみんなには、内緒だよ」「って、アユムねえ……私に、一言相談しなさいよ!」「それは、ほんとごめん。祝福してもらえると思ったら、なんか真逆の反応でさ」 右手で顔を覆い、首を振るバーシ。「これ、私も家族に、ハッキリ言わなきゃいけない流れじゃん……」「ほんと、ごめんて」 恋人に、深く頭を下げる。ボク、さっそく尻に敷かれてるね。「しっかし、ダイタンっすねえ~。パパとママに姉さんとのこと言ったら、どうなるやら、想像もつかないっす」「だなー。うちらはまだ、内緒にしとこうな」 肩をすくめる二人。「まあ、ボクから言うべき話は以上だけど、今日、一番大事なユーフラジーの出来栄えは?」「ああ。こんな感じにしてみたんだが……」 ククが、巾着袋から、ぼろい人形を取り出す。「え! 新品じゃないの?」「新品も新品だぜ。ただ、火事から十四年だろ? で、その前もアイちゃんが愛用しててさ。だから、わざとくたびれた感じに作ったんだ」 はー……。器用なもんだ。「シャロンは、いいお嫁さんゲットしたねえ」「ちょ、恥ずかしいこと言わないでほしいっす!」「お、おう! あたしまでその……照れるじゃねえか……」 もじもじする二人。「ちょっと~。私がいいお嫁さんに、なれないみたいじゃない」「そうは言ってないよ~」 バーシに責められてしまった。どうも、昨日から歯車がうまく回らないな。アイちゃんを送るときに、響かなきゃいいけど。 そんなこんなで、なんだか調子が狂ったまま、放課後を迎えるのでした。 ◆ ◆ ◆「着きましたよ」 車を、教会近くに停車させる先生。ついに、この時が来てしまった。 みんな、表情が険しい。「そんなじゃ、アイちゃんにニセモノだってバレちゃうよ。スマイル、スマイ~ル」 にっと、指で口角を上げ笑顔を作る。「なんだよ。お前だって、できてないじゃんか」「んー……バーシ」「何? ちょ、やめ! 私、脇腹弱いの!」 彼女の脇腹を、くすぐり回す。「緊張、ほぐれた?」「ふー……おかげさまで。お返し!」「やーめー! あははは!」 逆襲されてしまった~!「姉さん
今日もヤマト街に繰り出して、帰宅。こないだから、話そう話そうと思っていて、話せなかったことに、やっと決心がついた。「ええと、家族のみんなに、打ち明けたいことがあります。ちょっと、集まってほしいんだ」 お父さんたちが、なんだなんだと、ボクに招かれるままに、ダイニングに集まる。「あのね……。ボク、バーシと付き合い始めた。恋人として」 えーっ! という絶叫に包まれる一同。「本気か、アユム」 おじいちゃんが、困惑を絵に描いたような顔で尋ねてくるので、こくりと頷く。脱力するおじいちゃん。「冗談でしょう?」 おばあちゃんも困惑。今度は、首を横に振る。「はあ……。仲がいいのは結構だが、そういう関係とは……」 お父さん、頭を抱えて下を向いちゃった。「お母さん、こないだの夜遊びで、ちょっと臭いなーと思ってたけど、ほんとにそうだったなんて……」 この中では一番理解のありそうなお母さんも、ショックは隠せないようだ。 でも、一番ショックを受けてるのは……。「お姉ちゃんのバカ! なんで私じゃないの!?」 ハーちゃん、ボロボロと涙をこぼして、怒り泣き。「ハーちゃん。お母さんと約束したでしょ。ボクとハーちゃんはね、そういう仲には……」「うっさい、バカーッ!」 乱暴に立ち上がり、そのまま駆け出してしまう。「おい、ハーちゃん!」 お父さんとお母さんが、慌ててあとを追いかける。「アユム、その、考え直す気はないのかい?」 力なく、尋ねてくるおじいちゃん。「うん。ボク、今サイコーに幸せ。誰に言われても、友達に戻るつもりはないよ。キスも済ませたし」「キッスだと!? ああ……ちょっと、休んでくる」 おじいちゃん、去ってしまいました。「イクゼさん……。はあ……。孫の顔、見たかったけどねえ」 おばあちゃんも、顔が渋い。「それについては、本当にごめんね。前世だと、女同士で子供作れる技術があったんだけど。だから、結婚したら養子でも取るよ」「簡単に言ってくれるねえ……。ちょっと、イクゼさんが心配だから、見てくるわ」 ボク一人になっちゃった。 ハーちゃんが気になるな。こういうとき、ハーちゃんが行くところといえば……。 二階へ上がるための階段に向かう。 あ、やっぱり。お父さんと、お母さんがいた。「ハーちゃん、出てきて」「しょうがない、鍵を
「ねえ、クク」「なんぞ?」「最近、明るいね?」 朝の散歩中、ククに話題を振る。「そりゃまあ、今、恋してるしな!」 ふんすと、胸を反らす彼女。「その、さ。ユーフラジー作るの、もう辛くないの?」「辛いよ。でも、その上で突っ切ることにした。やっぱ、アイちゃんは天国でかつての仲間たちと、幸せに暮らすべきなんだ。だから、アイちゃんを幸せにするんだと思って、糸を通しているよ」 ボクと、同じ回答に至ったようだ。「だよね。いつごろ完成しそう?」「水曜には間に合わせる。だから、次の部活でお披露目だな」「そか」 しばし、無言で歩を進める。「アイちゃんも、誕生日に呼びたかったな」「そーすっと、誕生会の間、あたしの記憶がなくなるからな。それは切ねえ」 ままならないものだね。 なんだかしんみりしたムードのまま、出口に着いてしまった。「じゃあ、また学校で! ホリンも、明日またね!」「おう! 帰るぞー、ホリン」 ボクも、帰路につく。 ある意味、ユーフラジー再現計画が失敗に終わることを、願っている自分がいる。でも、それはよくない考えだと、頭を振る。 お別れしたくないよ、アイちゃん……。 いけない、いけないな。肝心のククが、吹っ切ろうとしてるのに。ここに来て、決心が揺らいでいる。 思考を行ったり来たりさせながら、気づけば家に戻ってました。 ◆ ◆ ◆「アユム。ついに明後日だね」 昼休み。バーシたちが、きりりとした表情で、ボクの机にやってくる。「うん。やっぱり、やるんだよね……」「アユム。吹っ切ろうぜ。頼むよ。あたし、くじけちゃうじゃんかよ」「ごめん」 こういうとき、頼りになる大人に相談したい……。あ。「ねえ。ネコザキ先生とも、よく話してみない?」「……そっすね。そういえば、先生の意見は、あんまよく聞かずに、決めちゃったっすね」「職員室、行こう」 席を立ち、四人で先生のもとへ向かうのでした。 ◆ ◆ ◆「あら、みんなそろってどうしたの?」「その、明後日のことでお話が……」「ああ、なるほど……」 ボクらの真剣な表情で、察してくれたらしい。「ちょっと、場所変えましょうか。すみません、音楽室お借りします」 キーを取る先生。ともに、ゆっくり話せる環境に向かう。 ◆ ◆ ◆ 音楽室の机を動かし、輪になるボクら。 それぞれの
今日は、お店番。ウェイトレスとして、かいがいしく働いています。 おっと、呼び鈴が。「いらっしゃいませ! ……あ」「よ。来たぜー」 ククと……おばさんにおじさんかな? おばさん、恰幅がいいですねえ。ククのスタイルの良さは、おじさんに似たのかな?「あなたがアユムちゃん? いつも、娘がお世話になって~」「はい。ええと、ご挨拶は後ほど。三名様でよろしいでしょうか?」 いきなり、距離感ゼロで来る人だなー、おばさん。なんか、調子狂うな。こういうとこは、ククに遺伝してるな。初日に、いきなり「友達にならないか」って、声かけられたっけ。「そうね。お仕事の邪魔しちゃ悪いわよね。案内してくれる?」「かしこまりました」 というわけで、四人がけのテーブルを勧める。「ここ、サーモンとイクラとほうれん草のスパゲッティーがうまいんだぜ! アユム、あたしそれと、コーヒーフロート」 ククが、うちの名物をプッシュしてくれる。ありがたや。「そう? じゃあワタシはそれと、このケーキを」「僕も、そのスパゲッティーと白ワインを」「かしこまりました」 お父さんにオーダーを伝えて厨房から出ると、「今、お客さん少ないから、お友達のご家族とお話してて大丈夫よ」と、お母さんに言われる。「ありがとう!」と言って、ククのテーブルへ。「お話しの許可が出たよ。アユム・トマルナーです。ククとは、仲良くさせていただいてます」 ぺこりとお辞儀。「今後も、うちの子をよろしくね。ククの話だと、なんでも健康にすごく関心があるんですって?」「はい。長生きが夢なので」 へー、と感心するおばさん。「なにか、いいダイエット方法、知らないかしら?」「そうですねえ。やはり、ジョギングがおすすめですね。なんなら、ただの散歩でもいいダイエットになりますよ」「やっぱり、運動と食事になるのねえ。ラクして痩せる方法ないかしら」 ため息を吐くおばさん。幸せが逃げますよー? しかし、個性の強い人だなー。「かーちゃん。あたしも、アユムと話したいんだけど? 夫婦の会話でも、しててくれよなー」「あら、ごめんね」 おばさんは、おじさんとの会話に入りました。「アユム。実はさ、あたしらも……」 小声で言いながら、ちょんちょんと、自分の唇を指差すクク。「わお! おめでとう!」「やべーわ、やみつきになりそう」 ひ